早朝賛歌

夜は寝る気が起こらなかった。

眠れないときは、目がさえて、窓の外が白みゆくのがもどかしい。

まだ日の登らないうちに、何とか寝れないものかと暗闇に横たわる。

暗闇でとりとめのないことがポンポンと想起される。昔心を痛めた頃は、天井を仰ぎただただ泣いていた。だからなのか、くよくよした頭になってしまう。エピソード記憶は忘れられていく。感情だけが、残留思念のように残り続ける。何がいけなかったんだろう、ダメだったんだろう。もう答えなんてないのに、わからないまま重力場を失って空転する気持ち。寝れないという事実が追い討ちをかけて、僕はダメなんだという気分になる。どうして、どうして。

 

少し、紫の窓が光を持ち始める。天気の悪い早朝は、心の奥底にある世界だから今僕は溶け出して形を保っていない。窓の外も内もない。世界と一体になる。

僕がモラトリアムの怠惰の中で身を崩す前のこと、いつもこの時間には起きていた。夜は辛い。それはそれとして、起きて1日を回さないといけなかった。夜明け前の、もっとも冷えた空気の匂いは暗闇の湿っぽさをまだ残している。

最後に早朝に生きていたのはいつだったろう。今世間でやってる、センター試験を僕も受けた高校時代。

シーブリーズの匂いがしたような気がした。

 

朝日は何ものをも待たない。明るむ時は一気に世界を照らし始め、身体がそれを敏感に察知して、ビタミンやセロトニンが駆け巡る。世界とぼくに一気に光が差し込む。

1日が始まる。正確には始業前の準備の段階だけど、これから否応無く背中を押されて始まる僕の一日。

何かが始まっている。それは今日の1日のようでもありもっと大きな、人生かもしれない!

世界に準備が用意された。歩いていいんだ 走っていいんだ 生きていいんだ その準備なんだ!

 


bloodthirsty butchers - Jack Nicolson MV (HQ) (w/ lyrics 歌詞)